やしろ国際芸術塾前にて

Enikki        隣の火の手 V    01/03/20  

 

あの時間帯に驚く程の混雑を見せていたA病院だったが、

そのことは名医であることを証明していた。

しかし同じ救急で入りながら

A病院では待たされたが、B病院は受け入れ態勢を整えて待っていた。

病院の持つ性格性の違いなのだろうが・・・・。

いや、そこは素人がとやかく言う範疇ではないだろう。

 

B病院の先生は署員の説明を聞きながら、患者を遠目に観察していたが、

いきなりこう言い放った。

 「これは重傷です、 6時間後には、確実に生命に危険な状況に陥ります。」

・・・・・・はい?

そんなバカな・・・

火傷は、髪の毛のてっぺんが焼けて縮れていて、額に火傷が認められるが

誰が見ても、その他に重傷らしき要素は何もない。

A病院の診察でも大丈夫と・・・・

 

せめてもの幸いに、

怪我が軽くて救われたと安堵した矢先の言葉に・・・ 耳を疑った。

いや、正しくは先生を疑った。

良く見もしないで、オーバーな事を! それも患者を目の前にして乱暴にも程がある!

私はハラハラしながら、先生に身振りを交えて何度か目配せを試みたが完全に無視された。

精神的にも計り知れないショックを受けている年老いた患者を目の前において・・

これから陥るであろうその大変な病状を話続けた。

主人はこの角度から現場を見た
納屋横の庭から飛行機雲のあたりに煙を確認

処置をしてもらっている間、私は外に出て署員に訪ねてみた。

「本当にそんなことになるんでしょうか?」

署員は、「いくらかは、大事をとって言われているんでしょうけど・・・」

首を傾けながら言った。

 

しかし、それが現実だった。

何千度という高温の熱風は、想像を絶することであるらしい。

 

気道閉塞。

喉が腫れて呼吸が出来なくなる。

手遅れになると、死に至る。

早期気道確保処置をしたい。

喉を切開するような事はさけたい。

 

先生は、なるべく早く処置をしたいと言われるが、

家族がいないので待ってもらうことにした。

 

もし、A病院へ行っていなければ、B病院まで来ることはなかっただろう。

臨床経験豊かな先生であったからこその診断だった。

もしどこか近くの外科に救急で入って、その診断が出来ていなかったら

大変な事になったかもしれない。

先生は、こういう患者の手遅れを幾つも見てきたと言った。

もし我が家で休んでもらっていて、呼吸困難にでもなっていたら

そう思うと空恐ろしかった。

 

 

顔の黒ずみはすすではなく火傷であるらしい。

鼻毛迄焼けていた。

そうこうしているうちに、見る見る顔に水泡ができはじめた。

顔は、ぱんぱんにむくんではれあがって来ると言う。

顔は、目と鼻と口の最小範囲だけ残して、包帯でぐるぐる巻きにされた。

それと同時に・・・いよいよ喉が危ない!

家族の到着が待たれる・・・・

続く 





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