コスモスが さいた
コスモスが さいた
コスモスが さいたから
おかあさんが きれいに みえます
コスモスが さいたから
コスモスが さいた
コスモスが さいた
コスモスが さいたから
ゆうびんやさんが にこにこ きます
コスモスが さいたから
空
この青くすんだ 空は
きのうの空のように 見える
百年まえの 千年まえの
もっともっと まえの
サルに にていたころの人間や
キョウリュウたちが 見上げていた
その同じ空のように・・・・
けれども 地球は
太陽のまわりを まわり
その太陽も 銀河宇宙の中をまわり
その銀河宇宙も
むげんの 大宇宙の中を
むげんに まわっているのだとすれば
いま 見上げている
この頭の上の ひろがりは
いま 初めて ここにきたばかりの
ま新しい ひろがりだと
どんなものに とっても 初めての・・・
そうして 二どと くることのない・・・
ああ それが ぼくの目には
なぜ 一枚の 空なのだろう
永遠に 変わることのないかのような
こんなに 青くすんだ・・・
雲
海をわたり
山をこえて
町をまたいで
虹と せせらぎの 昨日が
すぎていく
人に 雲とよばれ
かぎりなく
人に 雲だと信じられて
しつらえられた 一本の道を
ちりほどにも それることなく
はてしなく 自由きままに
すぎていく
すぎていく
虹と せせらぎの 明日が・・・
うみは うたいます
ざんぶら らんらん
ざんぶら らんらん
うみは うたを うたいます
きのうの うたを
あしたの うたを
さかなの あかちゃんが
かいの あかちゃんが
おねんね おねんね するよう
ざんぶら らんらん
ざんぶら らんらん
ざんぶら らんらん
ざんぶら らんらん
うみは うたいます うたいます
しってる うたを
しらない うたを
さかなの あかちゃんが
かいの あかちゃんが
いいゆめ いいゆめ みるように
ざんぶら らんらん
ざんぶら らんらん
雪がふる
雪がふる
雪がふる
遠い見えない ところから
遠い見えない 理由から
それは大昔の だた こんこんの
眠りだったころの 地球に
ふとある日 訪れたのか
それが もとで この世の中に
かずかぎりない 生き物たちが
生まれ出ることになった
小さなかすかな一つの夢が
そのとき 天に
生まれて初めての 嬉し涙があふれ
それは はるかに落ちつづけ
落ちつづけながら そのはるけさに
磨かれつづけ 磨かれつづけ
かがやく花びらになって とどいたのか
その地上の すべての物の上に
その初めての 雪から
なんまん なんおく年
今となっては もう
なかったのかも知れないと思えるほどの
そんなに遠い日を 思い出すたびに
今も 雪をふらすのか 天は
雪がふる
雪がふる
誰も知らない はるかなその日を
なつかしむように
記念するように
「まど・みちお全集」より
理論者・東京・1997
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