Enikki     ゆすら梅    02/03/30

3月30日(金)



しばらく 見つめていたが

意を決したように はさみを持った手で

花に近づいた

やおら はさみの音が二度 その直後

まるで逃げるように

脇目もふらずその場を去っていった

                         



去っていったのは私だった

目の前の 優しい花を愛で

その向こうに

否応なく浮かんでは消える 真っ赤な実を愛でながら

頭と心はいっぱいになって

一点を見つめていた



心が決まるが早いか

二枝切った




早足で ドキドキながら

ワクワクしながら

その場を去った




たどり着いた玄関の前で

私は はじけた








我が家のゆすら梅の二枝を

ほんの少しの

思いやりをテーマに

私は

盗みを演じていた














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