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皆さんは「豚に真珠」って「諺」をご存じですよね。
では、『豚に真珠』と言う「お話」を知っていますか。
たしか・・・昔あるところに豚がいました。って始まるお話なんですけれどね。
「僕はここだよ、 ここにいるよ。」 あら、誰か呼んでる・・・・
五月の爽やかな風が部屋を通り抜けると、又聞こえました。
「僕はここだよ、 ここにいるよ」
「アー 豚さん? そんなところで何をしているの?」 「今は何もしていないけどね。豚に真珠のお話だろ! 教えてあげるよ! 昔むかし、僕はトイレの棚のトイレットペーパーの横に立って、 ずーっと ずーっと 出世がしたいものだと、 僕にはもっと似合いの場所がある筈だって、 |
「それが・・・ ある日僕はトイレの棚から落っこちてしまってね。 |
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「なーるほど、 何ともお気の毒に・・・」
「僕だって、これで万事休す、全て終わったと思ったさ!
ご主人がゴミ箱を眺めながら、もう一度僕を見て言ったのさ。
『いいかもしれない・・・』 ってね。
何がいいのか分からないまま、
僕はトイレから冷たい土の上に置き去りにされたのさ。
あー! もういいって事か これが死ぬって事なのか・・・
今更のように、トイレで過ごした日々が懐かしく思いだされたさ・・・・。」
「 なるほど それはそれは・・・ 」
「 ところが、どれくらいたったのか・・・ ふと目を開けてみると
そこには、今まで僕の見たこともない世界があったんだ。
なんて事だろう!
僕にはまだまだ知らないことがいっぱいあったのさ!
陽が落ちるとね
空には可愛い星達が輝き 丸い大きなお月様が微笑み
夜風は顔にひんやりと なんと気持ちいいことか。
朝になれば露のしずくのシャワーが降り
小さな生き物が珍しそうに そそくさとあいさつしていく・・・
草の匂いや花の香り 土のにおいに お日様のにおいまで・・・・
ね! 分かるかい・・・・ 」
豚さんは、本当に幸せそうに言いました。 「・・・真珠を夢見ていた僕は真珠しか見えていなかった。
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「そんなに体が不自由になってもかい? 色あせて行く事も承知でかい?」 「そうさ、ここに来て初めて出会ったこの世界を、 素直になれた今の心を、大切にしようと思ってるよ。 そう思うだけで、 不思議に僕はいい顔になれるのさ! 心から幸せだって思えるのさ!」 |
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豚さんは、もう真珠がなくても幸せなんだね・・・。」 「幸せってね 自分の心の中にあったんだ。 何処にいてもどんな暮らしをしていても 感動する心を持たないと幸せとは言えないんだ! 今の僕は毎日感動でいっぱいなんだ。 昔の僕は狭いトイレの中で、 真珠のことしか考えていなかった。だから たとえ僕が真珠を自分のものに出来たとしても・・・・・ 心から感動して 幸せだって 思えたかどうか・・・・」 |
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「その夜から君は変わったんだね。」 |
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おだやかな昼下がり 5月の風は 何事もなかったかのように通りすぎて行きました おしまい |
たまたま落っことしてしまった置物の豚さんを庭に出した事で、思いがけず豚さんが語りはじめました。 結婚したばかりの息子は、4ヶ月後の3月、突然東京に仕事を転職しました。嫁は一生の仕事と思っていた職を捨てて、慣れない関東での寂しい生活。帰りたい帰りたいと・・毎日悩んでいました。私もどうしてやることもできず只聞き役でいました。私の心の中の祈るような思いが、こんな形になったのかもしれません。書いたのは2年前の5月ですが、今は子供もでき、気の合うお友達もでき、相変わらず帰りたい帰りたいは続いていますが、元気で暮らしています。 ときちょ |
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