bubutty33 ENIKKI パノラマ 01/01/10 |
此処に住んで20数年、私は一本の柿木を見て過ごしてきた。
若葉が萌えはじめ、春の訪れを感じるのも柿木なら
柿の出来具合で季節を振り返ったりもする天候のバロメーターでもある。
我が家では、すっかりなじみのあいつ。
木の葉が散りはじめる季節。
子供達は、いつもそれぞれ同じ場所から見るキャンバスに
残り僅かな枯れ葉で絵を描き、字を描いていた。
未だ残ってる! ほら見えるでしょ! ここから見て!
最後の一文字をダイニングの自分の席から、懐かしみながら過ごした幼い日・・・・
随分遠い昔のこと。
あれから子供達は、
あいつよりもっともっと面白いものを、沢山見て育ってきた・・・
子供達と共に、あいつも成長した。
そして子供達が立派に成人したように、あいつも立派になった。
毎日見てきたあいつは
残念ながら家の木では無い。
隣のあいつ。
朝一番に開ける窓。
そのリビングの窓から見てきた景色が私は殊の外、気に入っている。
あいつの向こうに龍野の山々が見える。
夏の花火が見えるのは二階からで、あいつはすっかり葉に覆われてまう。
しかしその姿は近年とても美しい。
この枝振りに葉が覆うと、丸いざるが裾を広げたような雄姿になる。
何度かその姿をカメラに納めたいと思ったが、どうも絵になりそうに無かった。
と言うのも、このパノラマキャンバスの大きさは、3b 1.4bながら
窓には10p間隔の外格子があって、4枚戸。
しかしなんとか・・・
葉は落ちてしまったが、撮りたかった写真を撮る事が出来た。
格子の隙間から何枚か撮ったものを繋ぐ事を思いついたのだ。
いつも見ている姿で再現できた時は ・・・嬉しかった。
実は格子があっても不思議と見ている姿、思い出す景色に格子は無い。
窓の外の景色だけだ。
同じ日の夕方、
綿菓子のような雲をバックに・・・
ソファーに座ると又こんなに空が大きく見える。
ダイニングに腰掛けると目線は少し上がり、初めの絵になる。
隣の私達が気にいって観てきたのを、あいつは知ってか知らずか
得意満面、毎年立派な柿の実を付け、たわわに枝を広げ成長している。
家にも5本ばかり柿木があるが、こうはいかない。
もしかしたら
毎日見つめられている事が張りとなって、
もっと立派に・・
もっと褒めて欲しい・・
もっとたくましく・・
と、成長していったのか・・・
いや、こうも言える。
もしかしたらあいつは・・・
そう、逆にあの窓から覗きながら、
なに食わぬ顔で、我が家絵巻をエネルギーに
大きくなっていたのかもしれないな・・・。
見ているつもりが
実は・・・・
見られていた・・・・ か・・・。